
九州訪問は、一体これで何回目となるのだろう。もうその記憶を思い出すのが困難なほどだ。これほど惹きつけるのは、神々の里であることや、文化が西から開けたことも影響していると思う。西欧の文化と日本の文化がとけ込んだ異空間を強く感じている1人だ。
その名のとおり、西から開けた西洋文化。それは明治に入っても続き、とりわけ日本の近代化に大きな貢献を果たす。これが目指す目的地だ。いまエネルギー問題は大きくクローズアップされている。明治から昭和にかけて、その燃料となる花形といえば石炭。炭鉱の町、大牟田へと向かった。
まずは三池炭鉱宮原坑跡。なかなか手強かった。何のことかといえば、地図に記されているとはいえ、詳細な住居表示がないナビ泣かせ。近くまできているのだが、容易に辿り着くことができない。道も車1台がやっと通れる幅しか無く、諦め掛けて大通りへと出る。きっと坑には高い建造物があるはずだと後を振り返ると、その姿を映し出してくれた。さらに幅員が狭く、避けていた道路がそのルートだっとは。苦労してこそ感動は大きいことを、このマップが教えてくれるのか。
宮原坑跡の周辺は、丘陵地のほぼ頂に位置しているが、周辺は民家が立ち並ぶ住宅地。この空間に突如、姿を現すものだから、想定外のサプライズ。北の大地で見てきたそれとは違い、規模では劣るものの、近代坑口施設としては日本最古だ。明治31年に開坑し、年間40〜50万トンを出炭した明治・大正の主力坑だった。鋼鉄製の竪坑櫓は力強く、レンガ造りの巻き上げ室は、歴史を身に纏いながらも温もりさえ感じさせる佇まいを残している。
大牟田における採掘遺構は、他とは趣を異にする。それは単に坑が残されているだけでなく、専用鉄道の軌道、変電所、関連工場など、一連の流れがわかる遺産が残されている。大牟田駅を基点にすれば半径10km圏内に点在しているが、許される時間はあまりにも少ないのが残念だ。宮原坑をはじめ、旧長崎税関三池税関支署、万田坑跡、そして三池港...、これらは「九州・山口の近代産業遺産群」の世界遺産候補と

されている。
宮原坑で出会った地元の方に、「山が少なくて炭鉱のイメージがわきません」と話しかけると、「ボタ山のことでしょ。クズなどは海に運んだからだよ」と明解な答えをいただいた。明治から昭和まで、経済と生活を支えるエネルギーを供給した数々の遺産を見ていくと、当時の情熱をも感じさせてくれる。日本の夢を追った、紛れもない近代化遺産。近代といえば小誌の社名にも使われている。願わくば遺産にならぬよう、今に生き、未来を歩む会社でありたい。
メガネで変わる、自分が変わる
【メガネの松永】

炭鉱で栄えた町、大牟田。その栄華の移ろいに合わせるかのように、商店街はひっそりと佇んでいる。もっともロードサイドビジネスに端を発した大型SCの隆盛は全国的であるが、その一方でひときわ輝くショップは必ず存在するもので、地元を愛するバロメーターともなる。
メガネショップとしての馴染み深い佇まい。しかし店内に一歩足を踏み入れると、一変する。カウンター越しに、またメガネを前にして楽しい会話が繰り広げられ、顧客の誰もがスタッフ以上の笑顔を浮かべ、メガネ談義に花が咲く。大牟田で出会った、メガネの松永だ。
メガネがファッションアイテムとして意識されてきたが、まだ二の足を踏む人たちも少なくないだけに、メガネの松永で繰り広げられる空間に身を置けば、楽しきメガネとの距離もグッと近づくのではないかと感じさせてくれる。この空気感は簡単に築かれるものでもなく、何よりもメガネに対する深い愛情があってこそ生まれる、という思いを強くする。
松永匡弘さんは、東京の専門学校で体系的に眼鏡学を学ぶが、「家業ということで、嫌々だったんです」と当時の素直な心境を語る。そんな松

永さんに転機が訪れるのは卒業間近になってから。専門誌やファッション誌で取り上げられるメガネショップに足繁く通い、メガネに対する価値観は一変するどころか、カルチャーショックを覚えたという。「ショップの作り、そこに並ぶデザイン性豊かなメガネ、働くスタッフ。地元の情報しか知らなかったので、すべてが新鮮に映りました」と、感動の大きさを表すように目を輝かせながら話してくれた。
地元大牟田を代表する夏祭り、大蛇山。その山車に使
われている大蛇をモチーフにした、松永さんの手作り
メガネ。レースは松永さんの夫人でハンドメイド作家、
man cafeのストール
マイナスの針がプラスに振れる。その振り幅の大きさは感動と比例する。自身の体験によってメガネの価値観を180度変えてくれただけに、そのメガネの世界観が多くのユーザーの心に響いているのだろう。帰郷してから徐々に商品構成を見直してきたが、苦労の末に取引を開始したアイテムがほとんどで、「お客さんに喜んでもらえるのが一番ですけれど、正直売りたくなかったんです(笑)」とは、メガネ好きを表す一言だ。
そのメガネ好きは、さらに拍車がかかる。オリジナルコレクションを自ら手がけ、さらにユーザー自身が楽しんでもらえるように、06年からはメガネ手作り教室を開くまでに。
楽しいメガネと楽しい会話。メガネ好きだから発せられる自然なオーラが、ここにある。コーディネートの基本はあるが、形にはめることはない。すべては装う人が楽しく掛けて欲しいとの思いが伝わってくる。「眼鏡を楽しむためには、販売する私たちがそれ以上に眼鏡を楽しむこと」と松永さん。メガネの松永に負けないくらい、メガネを楽しむユーザーは増殖中。ショップとユーザーの競演は止まることはない。


メガネの松永
住所:大牟田市本町1-5-20
TEL:0944-56-8855
FAX:0944-56-8858
営業時間:9:30〜20:00
定休日:正月のみ
HPアドレス:
www.m-megane.com
松永匡弘さん 店長おすすめの一品
左からアンバレンタイン UNA A22、
影郎デザインワークス POISON、ラフォン FOLIE 857
取扱ブランド
エフェクター、影郎デザインワークス、カムロ、ラフォン、アンバレンタイン、リアル、リドル、パラサイト、プロデザインなど