スポーツドクターとは、まさにアスリートたち

にとっての赤ヒゲ先生。中村先生のモチベーションを支えているのは、一般患者とは異なる次元での信頼関係。忘れ去られつつある、医は仁術を呼び覚ましてくれるようだ。
「アスリートが治療を終え、再びフィールドに姿を見せてくれる。本当にうれしい瞬間です。これはトップアスリートといわれる人たちですが、先生にいわれたエクササイズを続け、体幹が強くなり、オリンピックに出場できたとお礼をいわれると、きちんと続けてくれたんだなって。スピードスケートの田畑真紀選手とは、シンディクロフォードのエクササイズのビデオの話で、2人で意気投合した時がありましたが、その時点で私は1年でリタイアしたのに、彼女は7年も続けていました。ある時期に調子を落としていた時に、ホテルでもできるスタビライズトレーニングを提案したら、毎日欠かさず続けてくれたようで、良くなってきたと。とにかくトップアスリートは信じて継続してくれるんです。だから結果がともなってくる。この信頼関係は特別です」
ここでエクササイズが登場してくる。健康志向の強まりでエクササイズ人気は根強いが、一過性のブームで終わるケースが多く、なかなか定着しない傾向も見られる。その中で、中村先生によるエクササイズは幅広いメディアで取り上げられ注目度は高い。しかも一昨年の12月に初めての本を出して以来、わずか1年の間に4冊も上梓しているところでも、人気の高さがうかがえる。何を隠そう出版のきっかけとなったのは、中村先生の若さ。これが編集者の心を掴んだ。
「知り合いの税理士さんが本を出版するということで、編集の方との食事にご一緒させていただく機会があったんです。食事をしながらの会話の中で感じたのは、私を年下だと思っていたようでした。夏だったので薄い生地のボディラインが出るような服装も手伝っていたのかもしれません。年齢の話になったら、私が当時43歳で一番の年上であることが判明したんです。『どうしてその身体が保てるのか』と尋ねられ、その一端をお話させていただきました。何と翌日に、出版社から企画書が届けられたんです」
先生が提唱するエクササイズ本は、「10歳若返り」「10年先もキレイな脚」というキャッチが踊る。しかし若さや美しさは、あくまでも結果であって、本質は健康にある。ここがあまたに存在するエクササイズとは違うところ。
「国立スポーツ科学センターの前に勤務していた日光市立病院時代、整形外科医としての考え方が変わったてきたんです。ここは超高齢、高齢者の患者さんばかり。その一方で地元のアイスホッケーチームの選手の治療もおこなっていました。若い人の身体と年を取った人との身体の差は、何が違うのか。どうして老化による痛みが発症するのか。一般的に痛みは病気や怪我に起因するもので、老化は痛くないと考えていたからです。ところが老化で必ず痛くなるところが出てくる。それなら老化させなければいいわけです。またアスリートも身体を酷使するわけですから、老化の縮図のようなものでもあるんです。この共通点を含めて観察を続け、自分なりの結論を出すことができました。身体のカタチがキレイで若いままなら、痛くならない部分が多いということです。これができれば7、8割の人たちが医者にかからずに済んでしまう。姿勢や関節の位置とか、身体の使い方に気を付ければ、見た目も若くてキレイになるし、痛みもでない。だから人生の質も上がる。すごくハッピーなことですよね」
姿勢の良さは相対する人にとっても心地よさを

届けてくれるようで、その居住まいばかりに目を奪われていたことに気付く。改めて先生の表情に目を移せば、澄んだ大きな瞳が印象的。「3年前にレーシックの手術を受けました」という。ご自身にとっては歓迎されざるべき通説があてはまってしまった。ただ気になるのは、メガネやコンタクトレンズの必要性がなくなってしまったのかと心配していると、それを察知したようにバックからたくさんのサングラスと、視力矯正用のメガネをテーブルに置いてくれた。
「これまでの視力は0・05の強度近視。コンタクトレンズに頼っていましたが、保険外交員の紹介でレーシックを受けたんです。その方の『僕の紹介だと割引になる』にグラッときて(笑)。手術直後は2・0と良好な視力を手に入れたのですが、徐々に落ちてしまったんです。何が悪かったといえば、私はサーフィンをするので海水と紫外線による影響でしょうね。もうやりませんよねって? いまはお休みしていますが、復活します(笑)」
とかく近寄りがたい医師だが、こうした人間味あふれるところも中村先生の魅力の一つにもなっている。視力矯正に再びメガネが登場するのは、快適に見るためであるが、その大部分がアスリートのためとういのが中村先生らしい。
「メガネが必要になってきたのは、電光掲示板に映し出されるラップタイムが見えなくなってきたからです。黒に強いこだわりを持っているわけではありませんが、金縁だと怖いイメージを与えてしまうようで。黒いプラスチックタイプの方が先生って感じですよね(笑)。お子さんはもちろんですが、若い選手もメガネなしの方がいい。いつも笑顔で迎えたいので、メガネというフィルターはない方がいいですね。個人的には夜の運転に活躍していますが、やは

りトレーニング時のラップがとにかく気になる。メガネはアスリート専用です」
メガネにおいてもアスリート漬けとは頭が下がる思い。それは一般患者に比べ、長期にわたる付き合いになるからだが、「4年周期(五輪)のドラマがあって、代表選考にもれた時や、五輪終了後に引退するとあいさつに来てくれると、本当に泣けてきます。選手達はずっとひたむきに同じ競技に取り組んでいます。その選手達が一番いい時期に散っていくのを見ていくのは、人生の縮図を見る思い・・・」と畏敬の念に通じるものを感じているようだ。最後に今後の活動について伺うも、自らはあくまでもサポート役に徹する姿勢が印象に残る。ただ、健康美の追究は中村先生にとっても大切なライフワークであることに変わりない。
「アスリートたちが結果を残すことができるのは、本人の力です。私を含めサポートスタッフ全員の思いです。戦うのはアスリート本人であって、努力した結果です。私たちができることは、本人がもっている最大のパフォーマンスがだせるように、最大限にお手伝いすることだけ。スポーツドクターはやりたくても、そう簡単にできない状況にもあります。それだけに私はものすごく貴重な体験をさせてもらっています。この経験を生かして、もっと多くの人たちに身体のコンディションの整え方は知ってほしい。例えば本でも紹介しているインナートレーニングは普段からアスリートに指導していることなのです。アスリートの場合チューブなどを使ったり、フリーウェイトで対応しているのに対し、一般の方には自分の身体だけの負荷を利用し、強度を落としたというだけで基本は同じです。そして私の特色を生かしてエクササイズを実践してもらい、身体のどこかが痛くなるという心配を少しでも減らしたい。痛みがとれました、という効果が得られるエクササイズの提案は今後も続けていきます」
全文は是非、本誌でお楽しみください。
profile
なかむら かくこ
整形外科医、医学博士、国立スポーツ科学センター医学研究部研究員、スポーツドクター
1966年岩手県盛岡市で生まれる。横浜市立大学医学部を卒業し、同大整形外科学教室に入局後、相模原協同病院、横須賀北部共済病院の整形外科医員、自治医科大学整形外科学講座助教授、日光市民病院整形外科科長を経て、国立スポーツ科学センター医学研究部員に就く。日本代表選手の海外遠征に帯同するなど、トップトップアスリートの指導・治療に当たっているほか、医学的根拠に基づいたエクササイズ本を出版。テレビや雑誌等で話題に。著書に「女医が教えるマジカルエクササイズ」「女医が実践する10秒マジカルダイエット」、「Dr.KAKKOのツンツンくびれ体操」などがある。
オフィシャルホームページ www.dr-kakko.com/