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| 「シクラメンのかほり」の頃に
あえてメガネをかけたのは、 ジョン・レノンの影響なんだよね。 |

ある時は、類稀なる歌唱力で私達を圧倒するシンガー。
ある時は、三谷幸喜作品でコミカルな演技を見せる役者。
そして素顔の布施さんは、とてもフレンドリーなのに どこか飄々とした魅力を持っている人だった。
「オケピ!」の稽古が終わった後のとある夕暮れ。 歌に芝居、メガネ、そして青春時代を布施さんは語った。
小学校4年生の2学期
布施さんは、知る人ぞ知るメガネ通だ。新旧合わせて300個以上のコレクションがあるそうで、この日も、その中から思い出深いものを20個近く持ってきてくれた。
メガネとのつきあいは古いんですよ。今でも覚えてるけど、小学校4年生の夏休み、なぜかわからないけれど、一生懸命勉強してね(笑)。2学期になったら、どうも黒板が見にくいんだよ。その時からメガネ。以来、メガネ屋さんがあると、入らずにはいられない性格になってしまった。
ちゃんと集めだしたのは、19か20歳の頃。仕事を初めて、外国旅行に行くようになってからだね。向こうでフレームだけ買ってきて、帰国してからレンズを入れる。これ(レンズの分厚いメガネを手にして)は、ロスで買ったもの。当時のプラスチックレンズはとても大きかったんだよ。このメガネ、片側のネジだけ色が違うでしょ? 壊れたから別
のネジをつけたら、その新しいネジだけサビちゃったの。おかしいでしょ(笑)。
これ(丸いボストン風)は、ロンドンで買ったもの。ジョン・レノンもしていた、イギリスで大流行したタイプ。古道具屋さんに行っても、このタイプのメガネがたくさんあるんだよね。何故だか知ってる? 壊れても保険で作れるメガネだったらしい。
僕はね、基本的には流行りものは得意ではないんです。どうしても時代や流行と逆行してしまう。僕が好きなのはレイバンタイプのタレてるデザイン、そしてレンズが大きいもの。「かけてるぞ!」という、グッとした手応えがあるほうが好みなんだよね。
「シクラメンのかほり」の頃 1970年。布施さんはそれまでの歌のスタイルをガラリと変えた。髪を伸ばし、ギターを持ち、そしてメガネをかけて、新しいジャンルに挑戦した。それが「シクラメンのかほり」。その年のレコード大賞を受賞した、昭和史に残る名曲だ。
僕があえてメガネをかけて歌ったのは、やっぱりジョン・レノンの影響なんだと思う。あのメガネは思い出深いんです。その頃は、丸いフレームはあったんだけれど、丸いながらも微妙にカチカチとした角があるフレームがなくて、わざわざメガネ屋さんに削ってもらったんだから。だからこれ(当時のメガネを手にして)、手作りなんだよね。よく見ると、いろいろなところがギザギザしてるんだけど、「これが画期的なんだ」って、当時は思ってたんだよねえ(笑)。
もうひとつ思い出深いのは、カルバン・クラインのこのメガネ。三谷さんの「ラヂオの時間」という映画に、僕はこのメガネをかけてラジオの編成マンとして出たんです。映画が終わって、このメガネを壊してしまったんだけど、「もう使うことはない」と思って、そのままにしてたんだよね。そしたら、三谷さんの次の映画「みんなのいえ」に、同じ役での出演依頼があって、三谷さんが「あのメガネはありますか?」って言うんだよ。「ありません」と言ったら、「うーん、あれが良かったんだけどなあ……」と唸る。それからが大変! メーカーに聞いて、在庫がないから全国の店を探してもらって、九州でやっと見つけて送ってもらったメガネなの。たった1つか2つのシーンなのに、三谷さんは細かいこと言うんだなあ(笑)。
ちなみに、「ラヂオの時間」では、僕、アドリブでセリフを言っているところがあるんですよ(※藤村俊二さんが、ラジオドラマの効果
音を作るために50円玉が必要だと言うと、布施さんが『ああ、これ使って』と、1万円札を出すシーン)。これが意外とウケて、三谷さん、ブツブツ言ってたなあ。「アドリブなのに、あんなにウケるのは悔しい」って(笑)。
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布施 明(ふせあきら)
1965年「君に涙とほほえみを」でデビュー。70年「シクラメンのかほり」で日本レコード大賞受賞。以後「君は薔薇より美しい」など数々のヒットを飛ばす。新曲の「DO
MY BEST」では作詞・作曲も手掛ける。毎年恒例の「ドラマティックコンサート」は、今年18年目を迎えた。また昨年9月、これまでの名曲をアレンジも新たにレコーディングし直したベスト盤「DO
MY BEST」をリリース。一方、役者としての活躍も目ざましく、映画では「ラヂオの時間」、舞台では「ウィンド
イン ザ ウィロー」「キング・オブ・ラディッシュ」「阿呆劇
ファルスタッフ」など。00年の初演に続き、今年の3月から始まる三谷幸喜作の「オケピ!」にも出演。
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