private eyes magazine

 

 


6年間で約30作品という連ドラ出演記録を持ち、 47歳の今も第一線で活躍する俳優・内藤剛志さん。 彼はどんな役にもこだわりを持って打ち込む。 たとえばメガネひとつにも、納得できる理由を求める。 今回は、プロの役者だからこそわかる眼鏡の意味や魅力とともに、 彼の好きな映画、彼の好きな時間をたっぷり語っていただいた。

「軽くて丈夫」が僕のこだわり 高校生から視力が落ちて、メガネをかけるようになったという内藤さん。プライベートでは、どんなメガネを好んでいるのだろう。

 高校生の頃のメガネは、「黒板を見るための道具」ですね。机やカバンの中に突っ込んでおいて、授業中だけかける。実用的であればよかったんです。  今も「軽くて丈夫で使いやすい」が僕のこだわり。ファッション性をさほど重視しないというのは、昔から変わらないかもしれません。視力は0・1以下なんだけど、プライベートでかける時は、車を運転する時か、映画や舞台を見る時だけなんです。というのも、僕は演技をしている時間が長いので、そうそうかけてはいられないから。たぶん、「見えない」ことに慣れちゃったんでしょうね。台本もメガネなしでOKだし、雑誌や本もメガネなしで読めちゃうんです。

憧れたレイバンのティアドロップ
「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングのゲストに呼ばれるたび、彼は必ず、司会のタモリさんに、サングラスのお土産を持っていく。サングラスには、様々な思い出があるそうだ。

 初めてサングラスをしたのは、たぶん大学生の時だと思います。当時、レイバンが流行っていて、外国映画の俳優たちが、みんなレイバンのティアドロップをかけていたんですよ。日本だったら原田芳雄さんや松田優作さん、当時ダウン・タウン・ブキウギ・バンドだった宇崎竜童さんもティアドロップ型型で、「ああ、カッコいいなあ」と思って、真似してた。  今も「カッコよくなりたい願望」はあるけれど、それより大きな理由が「見られたくない願望」かな。サングラスをかけると、自分の中に「オレは今隠れている」っていう認識ができるんですよね。  持っているサングラスの数ですか? オノフさんと契約をさせていただいていることもあるけれど、40本はあるかなあ。その中にはもちろん無名ブランドの1000円のもある。僕の中で、1年周期ぐらいで「今はこれが好き」というのがあって、少なくとも1年間は、しつこく同じものをかけるんですよね。ある時期は、ハマキで有名なダビドフというメーカーだったし、ある時期はオリバーピープルズだったし。今はもちろんオノフですけど。  面白いもので、メガネもサングラスも、気に入っているものほど、すぐなくすんですよ。僕の場合は特に、かけたり外したりすることが多いから。たとえば撮影現場に行って、ロケバスで着替えている時にポンと外してそのまま忘れてしまったり、衣装のポケットに入れたまま返してしまったり。でも、それでいいと思ってるんです。いつも使っているからなくすわけでしょ? メガネやサングラスは飾っているだけじゃ意味がない。使われてナンボ。だから、いいんです、それで。

メガネは役作りの最後に決める
役の上でメガネやサングラスをかけることも多い。新しい役をもらうたびに、監督やスタイリストさんと、衣装や小物について、細かな打ち合わせをする内藤さん。役者にとってのメガネとは?

 すごく大事です。その理由は2つあって、ひとつは観ている方にキャラクターを説明する道具だということ。もうひとつは、自分への暗示です。メガネをかけている自分の顔って、日常は自分では見えないわけでしょう? そこがポイント。見えないからこそ、「今、自分はこんなメガネをかけている人間なんだ」という自己暗示がかけられる。そんな不思議な力を持っているんです。  たとえば、ある2時間ドラマで、僕に検事事務官という役がきたんです。法律に精通 しているのに、検事にならなかった変わり者の事務官。そこで、スタイリストさんと「東海林太郎さんみたいな、黒縁のまん丸いメガネにしよう」と決めたんです。なぜなら、台本に「風采があがらない」と書いてあったから。背の高い、こんな顔をした僕が、どうすれば検事役の真野あずささんと並んだ時に、セクシャルさを全く感じさせない、風采のあがらない男になるかをすごく考えました。そこでまず、スーツの下にニットのベストを着ようとひらめいた。ひと昔前の数学の先生のようなね。それで「外見を全く気にしない」という外見を作ろうと。監督からもOKが出て、最後に黒の丸メガネが決まったんです。  そういえば、メガネが決まるのはいつも最後ですね。画竜点睛ではないけれど、メガネというのは、役作りにそれほど大切。で、僕はそのメガネをかけることで、「オレは今、風采のあがらない事務官なんだ」と、強く意識できるんです。

かけっぱなしでいいですか?
窪塚洋介さんと共演した映画「Laundry」で、内藤さんは鳩の飛ばし屋・サリーを演じた。映画のほとんどが、あやしげなサングラスをかけたままだ。

 これは、森淳一監督のオーダーだったんです。映画を撮る前に、「内藤さん、ずっとサングラスをかけっぱなしでもいいですか?」と聞かれたんですよ。俳優の中には、目が見えなくなることをイヤがる人もいるそうなので、気を遣って下さったみたいで。もちろん僕は「いいですよ」と答えました。でも「なぜサングラスをかけるのか」は聞かなかった。というのも、僕自身も、映画をご覧になった方も、サリーがなぜ、眠る寸前までサングラスをかけているのかを考える映画なんだろう……と思ったからなです。  サングラスをかける意味で言えば、海外と日本では捉え方が違うなと思ったことがありますね。エッセイにも書いたんですが、一度だけ僕、怒りのあまりに、サングラスを叩き割ったことがあったんからすよ。  撮影現場で事故があり、友人が生死をさまようほどのケガを負ったんです。僕らもすぐに病院にかけつけました。そしたら、ある人が「あなた、病室ではサングラス外しなさいよ、不謹慎でしょ?」と僕に言ったんです。瞬間、「何が失礼なんだ!」と、投げつけてました。この雑誌で言うのもナンですが。  でも、アメリカでは、お葬式の時にサングラスをかけているでしょ? 哀悼の気持ちがあれば、サングラスを不謹慎だと思う人はいない。サングラスが涙を隠す役割をしているかもしれないんだから。でも、日本では「そういう場でのサングラスは不謹慎」になる。何故でしょうね。ほんと、アタマ来たんですよね。

内藤剛志(ないとうたかし)
1955年大阪府生まれ。文学座研究所を経て、80年映画『ヒポクラテスたち』でデビュー。以後、数々の映画やドラマ、バラエティなどで活躍。主なドラマに『家なき子』『外科医・夏目三四郎』『金田一少年の事件簿』『はんなり菊太郎』など。主な映画は『幻の光』『ワンダフルライフ』『Laundry 』など多数。『千と千尋の神隠し』では声優にも挑戦した。2003年夏には、主演映画『リバイバル・ブルース』(共演・桃井かおり・奥田瑛二/ベルリン映画祭出展予定)が公開予定。著書に『王国』『中年無休』など。

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■映画「わらの犬」のメガネのこと。モーニング娘との共演、愛娘のことなどプライベートなこともたくさんお話しいただいています。

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